コラム
なぜエスクローは「違法では?」と思われるのか

「エスクローって、資金決済法に引っかからないんですか?」
問い合わせやSNSで、こういう質問をもらうことがあります。
同じような質問はこれまでにも何度かあって、実際に不安に感じている人は少なくない印象です。
お金を一時的に預かる仕組みなので、そう思うのも無理はない気がしています。
私自身、この分野に関わる前は、正直なところ細かく理解していたわけではありませんでした。
ただ、実務として関わる中で、どうしてこの疑問や誤解が生まれるのかは、少しずつ見えてきた気がしています。
なぜそう思われるのか
エスクローは、「お金を一時的に預かる仕組み」と説明されることが多いです。
この説明だけ聞くと、
- お金を預かる
- その後別の人に渡す
というイメージになります。
ここだけ見ると、「それって資金移動業では?」と考えるのは自然です。
実際、ブログや記事の中でも「資金移動業に該当するのでは」と書かれているものを見かけることがあります。
ただ、このあたりは言葉だけで見るとそう見えますが、実際の中身は少し違います。
どこで認識がズレるのか
ただ、この話はもう少し細かく見る必要があります。
例えば、
- 誰のために預かっているのか
- いつの時点で支払いが確定するのか
- そのお金は誰のものとして扱われているのか
こういった前提を抜いたまま考えると、単純な「資金の移動」として理解されてしまいます。
でも実際には、取引の中で発生するリスクをどう扱うか、という話でもあります。
実務としての整理
この点については、このエスクロー事業を始める前に資金決済を専門とする弁護士にリーガルチェックを依頼しています。
また、2023年金融庁の金融審議会の中でも、
- エスクローは信用リスクの受け替えという整理があること
- 為替取引としてすぐに規制対象とする必要性は共有されていないこと
- 重大な問題が発生しているわけではないこと
などが示されています。
さらに、2025年度の制度改正でも、クロスボーダー取引の一部は規制対象になりましたが、エスクローサービスという仕組み自体は規制対象外と整理されています。
それでも疑問が残る理由
ここまで整理しても、「本当に問題ないのか?」と感じる人はいると思います。
これは法律の問題というより、「お金を扱う仕組み」に対する感覚の話に近いのかもしれません。
- なんとなく不安
- 仕組みが見えにくい
こうした感覚があると、どうしても慎重になってしまうのは仕方ないのかと思います。
もうひとつの見方
この話は、「違法かどうか」だけで考えるより、
- どこでリスクが発生するのか
- そのリスクを誰が持つのか
といった視点で見ると、少し整理しやすくなります。
単純な法律の話というより、取引の構造の話として見た方が分かりやすい場面もあります。
「違法かどうか」より先に見ておきたいこと
「お金を預かる」という言葉だけを見ると不安になりますが、実際には、取引の中で生じる信用リスクをどう扱うかという仕組みの話でもあります。
金融庁の整理や制度の動き、専門家の確認を踏まえると、エスクローサービス自体が単純に規制対象とされているわけではありません。
ただ、その前提が見えにくいまま言葉だけが先に立つと、違法ではないか、という疑問が自然に生まれるのだと思います。
エスクローが「違法かどうか」の判断を急ぐのではなく、どのような構造で取引が成り立っているのかを見る事が重要ではないでしょうか。
