コラム
未払い問題は本当にある?

「未払いって本当にあるの?」と言われた日
カリバライというサービスを立ち上げるにあたり、事前にさまざまな調査やヒアリングを行っていました。その過程で、何度か耳にした言葉があります。
「未払いって、本当にあるんですか?」
正直、その質問に少し驚きました。
なぜなら、フリーランスや小規模事業者が取引先とのトラブルがあったという話は、決して珍しいものではなかったからです。
さらに印象に残っているのは、東京都中小企業振興公社の事業評価を受けるための面談の場でも、同じような言葉をかけられたことです。
行政の方から見て「未払いは実感がない」という事実に、違和感を覚えました。
このズレはどこから来るのか。
そして、未払いは本当に「ある」のか。
事実をもとに再確認してみたいと思います。
フリーランスは、どれくらいいるのか
まず前提として、日本国内のフリーランス人口には大きな幅があります。
- 内閣官房(2020年):約462万人
- 総務省統計局(2023年):約209万人
- フリーランス白書(2023年):約859万人
- クラウドソーシング(2021-22年):約1,577万人
ここまで差が出る理由は「フリーランス」の定義が本業として働く自営業者のみを対象にするのか、副業・単発・ギグワークまで含めるのか調査ごとに異なるからです。
それらを平均すると、日本にはおよそ776万人程度のフリーランスが存在すると考えられます。
この人数を前提に、未払いの実態を見ていきたいと思います。
データで見る「未払い」の実態
未払いがあるかどうかは、感覚ではなくデータで確認できます。
「フリーランス実態調査2020年」(内閣官房)
- サンプル数:144,342人
- 報酬の支払いが遅れた・期日に支払われなかった:28.8%
- 未払いや一方的な減額があった:26.3%
- 外部リンク
- フリーランス実態調査2020年
「フリーランスとして働く人の意識・実態調査2025」(連合)
- サンプル数:1,000人
- 期日までに報酬が支払われない問題があった:35.9%
- 外部リンク
- フリーランスとして働く人の意識・実態調査2025
厚生労働省「フリーランス・トラブル110番(2022年)」
- サンプル数:642人
- 報酬の不払い・支払遅延・一方的減額:32.1%
- 支払遅延・減額に関する相談が6割弱
- 外部リンク
- フリーランス・トラブル110番
フリーランス白書2022年
- 有効回答数:467名
- 報酬の支払い遅延:43.7%
- あらかじめ定めた報酬の減額:32.4%
- 外部リンク
- フリーランス白書2022年
※「一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会「フリーランス白書2020」」
調査ごとに母数は異なりますが、報酬トラブルの割合はおおむね3割前後で推移しています。
サンプル数は少ない?それでも見えてくる現実

確かに、これらの調査のサンプル数を合計しても、フリーランス人口全体から見れば一部にすぎません。
それでも、SNSやネット上では、
- 支払いが遅れている
- 連絡が取れなくなった
- 条件を後から変えられた
といった声が、日常的に見受けられます。
多くの場合、こうしたトラブルは表に出ません。
理由は明確です。
- 時間と労力がかかる
- 関係性が壊れる可能性がある
- 声を上げても無駄だと感じている
結果として、「なかったこと」にされてしまうケースが少なくありません。
「未払いはない」と言えるのか?
未払いは、確かに存在しています。
しかし、見えにくい。
行政や支援機関に届くのは、「整理された相談」「声を上げられた人」の一部だけです。
一方で、
- 諦めた人
- 泣き寝入りした人
- 途中で声を上げるのをやめた人
の多くは、数字にも記録にも残りません。
その結果、「未払いは聞いたことがない」という認識が生まれてしまう。
これは、誰かが悪いというよりも、そう見えてしまう構造の問題です。
見えないから、存在しないわけではない
結論として、
報酬未払い問題は確実に存在しており、決して少なくありません。
働き方が多様化し、フリーランスやひとり法人等の小規模事業者が今後も増えていく中で、組織に守られていないという立場の弱さは、より顕在化していきます。
未払いを「特別なトラブル」として扱うのではなく、「起こり得る前提」として捉える。
その視点を持つことが、これからの取引や制度を考える上で、欠かせないのではないでしょうか。
