コラム
エスクローとは?仕組みをわかりやすく解説

仕事をしていて、「ちゃんと払われるだろうか」と不安になる瞬間は、できれば考えたくないものです。
それでも、フリーランスや小規模事業者として活動していると、お金の話が後回しになったり、確認しづらかったりする場面に何度か出くわします。
今回は、その不安を解消する仕組みのひとつとして知られる「エスクロー」について、できるだけやさしく解説してみたいと思います。
エスクローってなに?
たとえば、「商品」の売買をする場面を想像してみてください。
売る側は、
「先に商品を発送して、本当にお金が支払われるだろうか」
と少し不安になります。
一方で、買う側は、
「先にお金を払って、ちゃんと商品が届くだろうか」
と考えます。

どちらも相手を疑っているわけではありません。
ただ、立場が違うだけで、不安に感じるポイントが違う。
そこで、お金をいったん第三者に預けることにします。

買う側:約束した金額を第三者に預ける
売る側:商品を発送
買う側に商品が渡ったことを確認したあとで、第三者がお金を売る側に支払う
こうすることで、
- 「払われないかもしれない」
- 「届かないかもしれない」
という不安を、お互い抱え込まずに済みます。
このように、取引の間に第三者が入り、受け渡しが終わったことを確かめてから、預けていたお金を支払う。
この仕組みの事をエスクローと呼びます。

上記では「商品」に例えましたが、サービス(デザインやさまざまな業務)の取引にも利用する事ができます。
エスクローという言葉の由来
「エスクロー(escrow)」は、もともと英語の法律用語で、「第三者が預かる」という意味合いを持っています。
語源をたどると、中世フランス語の「escroue(証書)」に由来するとされ、契約書や証書を、条件が整うまで第三者が保管する慣習から発展してきました。
つまり、エスクローの本質は中立的な第三者が、条件が満たされるまで責任を持つことにあります。
米国で広がったエスクローの考え方
エスクローが広く知られるようになった背景として、米国、特にカリフォルニア州の不動産取引があります。
米国では、個人同士が不動産を売買することが一般的で、高額な取引を安全に進めるために、エスクロー会社が間に入る形が定着してきました。
現在のカリフォルニア州では、不動産売買においてエスクローを利用するのが標準的な流れとなっています。
これは「制度として必須」というより、使わない方がリスクが高い、という共通認識が積み重なった結果だといえます。
日本におけるエスクローの位置づけ
日本では、エスクローという言葉自体がまだ馴染み深いとは言えません。
現状、多くのエスクローサービスは収納代行サービスに近い位置づけで運営されており、金融庁が公開している2025年度の資金決済法改正の資料において、エスクローサービスは規制対象外とされています。
これは、「規制が不要」という意味ではなく、現行の枠組みの中で対応可能な仕組みとして認識されている、という理解が近いように思います。
エスクローの活用事例
エスクローは、すでにさまざまな場面で使われています。
- 個人間売買(中古品・高額商品の取引)
- フリマアプリ
- クラウドソーシング
- オンラインオークション
- コンビニでの電気代等の支払い
- 不動産売買
- M&A(企業買収・事業譲渡)
意識していないだけで、実は身近なところに存在している仕組みでもあります。
なぜ今、エスクローが注目されているのか
働き方や取引の形は、ここ数年で大きく変わりました。
- フリーランスや個人事業主、副業の増加
- 個人間取引の一般化
- オンライン完結の仕事の増加
一方で、支払いの流れは昔の感覚のまま残っている部分が多い。
未払いが起きる可能性を抱えたまま取引をすることが、「当たり前」とされてきた時代から、少しずつ違和感を持つ人が増えてきているように感じます。
- 信頼だけに頼らない
- 当事者同士が直接対峙しなくても済む
- 取引の前に不安を減らす
エスクローは、取引の安全性を高めるための便利な仕組みのひとつです。
仕事を始める前に、支払い方法について見直すきっかけにはなると思います。
その視点を持つだけでも、仕事やお金との向き合い方は少し変わるかもしれません。
